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人を幸せにするスキル

実験心理学(知覚・認知心理学)のよしだです。

8/24(金)~25(土)の2日間,広島市のこども療育センターが主催する福祉機器展が,市の心身障害者福祉センターで開催されました。
市内に3つある療育センターを利用している子どもたちとそのご家族,および療育スタッフが集まって,最新の福祉機器や福祉関連技術を見て体験して学ぶイベントです。

福祉機器の展示はそれを専門とする企業さんが行うのですが,その中に唯一,大学から私のゼミが参加するようになって,今年で4年目になります。
私のゼミでは,子どもたちの「遊び」を通して,彼らの認知の様子を評価したり,その発達を支援する試みを,センターをフィールドのひとつとして行わせていただいています。

遊びなんだけど,こんなこともできるよ。こんなこともわかるよ,こんな力をつけられるよ。そして...なんといっても,楽しいよ! (^o^)
毎年夏休みに行われる福祉機器展は,私たちがやっていることを広く関係者の皆さまに知っていただくための大切なチャンスなのです。たくさんの子どもたちがやってきてくれます。

今年は,今,ゼミの4年生が卒論研究で行っている視線入力を使った文字や言葉の学習プログラムを中心に展示しました(下は準備中の写真です)。

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今の大学生世代の若者の多くは,小さいとき,例えば「アンパンマンのあいうえお」のようなおもちゃを使って言葉を覚えた経験をもっています。でも,このようなおもちゃは指でボタンを押して音声を聞く仕組みになっていますので,脳性まひなどで手の自由がきかない子どもは使えません。

以前このブログで紹介したように,私たちは,目で見るだけで,文字ボタンを選べるソフトを作って,生まれつき身体の障害をもっている子どもの言葉学習や文字学習を支援できないかとチャレンジしています。


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もうひとつ,今年は,療育センター内の二葉園と一緒に新しい出し物に挑戦しました。

二葉園は,就学前の肢体不自由児の子どもさんが通っている施設で,ほとんどの子どもさんは自分で立つことや歩くことができません。
そのような子どもさんに対する理学療法に,最近,「スパイダー」という器具が使われるようになってきました。2007年に重症心身障害児の理学療法で有名なびわこ学園の高塩純一先生がアメリカから日本に紹介して普及し始めた最先端の装置だそうです。

これ(↓)がスパイダー。頑丈な金網の枠の中で,子どもさんを4方向から強力なゴム紐で引っ張ることで,重力の負担を軽くして自立させ,その中で関節の動きや身体の重心の取り方などを訓練します。

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私は,昨年の福祉機器展に高塩先生が来られて子どものスパイダー訓練の体験会をされているのを初めて見て,とても感動しました。
普段とても気難しい子どもが,スパイダーでゴム紐の力を借りてぴょんぴょん飛び跳ねる中で,これまで見たこともない笑顔を見せてくれるのです!
全身を思いっきり動かすことって,子どもにとって,こんなに楽しいんだ!
パソコンを使った「疑似的なゲーム」しか作っていない自分を恥ずかしく思いました。

その一方,高塩先生の方は,私のゼミ生が展示していた身体を使って遊ぶゲームを見て,大変気に入っていただいて,「これを使わせてくれ」とのこと。高名な他分野の先生に使っていただけるなんて光栄,もちろん,どうぞ!! (^^)

その2週間あまり後に,びわこ学園から送られてきたメールに添付された3枚の写真を忘れません。その1枚はいつも学生の目に触れる実験室のロッカーに今も貼っています。
それは,高塩先生が療育中のSMA(脊髄性筋萎縮症)の子どもさんの訓練中の写真。スパイダーの中,笑顔で訓練中の子どもの前にあるディスプレイには,私たちのソフトの画面が写っています。
メールには,「これまで頭部保持が1分しかできなかった子どもが,先生のゲームを使ったら30分間可能でした」,「モチベーションと遊びの楽しさの大切さを改めて教わりました」とのメッセージ。

子どもって,気持ちが変わるとすごい力を発揮するのです。

これこそ,「心理」の重要性です!


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だから,今年はスパイダー体験をさらに楽しくしてみよう!...と作ったのが下のリンクのビデオにあるプログラム。

私のような実験心理学者は,ミリ秒(1000分の1秒)以下の精度でコンピュータを正確に動かしながら自然画像を操作して画面に瞬間的に提示するような実験プログラムを作ります。だから,コンピュータのプログラミングにかけては情報工学の専門家と変わらないくらいのスキルはもっているのです。

今回作ったのは,スパイダーの中を画像処理で別世界に変えてしまうプログラム。研究というより遊び(ゲーム)レベルの簡単プログラミングです。
ちょっと協力してよと,集中講義で大学に出てきていた学生たちにお願いしてテストしてもらいました。

【ビデオ】


右下に小さく写っているカメラの映像を,機械認識によってコンピュータが人物と背景に切り分けて,人物だけを残して,後は任意の背景画像と合成しているのです。放送局のようなスタジオがなくてもできるのがこのプログラムの特色。
福祉機器展では,子どもにこの別世界の中で遊んでもらったり,それをプリント写真にしてご家族に差し上げようと企画したのです。

普段,自分で立つことができない子どもさんが,立っている姿を写真にしてみよう。
下のゼミ生の写真を見比べてください。全然違って見えるでしょう? 私の専門は知覚・認知心理学ですが,見て感じることって結構重要で,印象を大きく左右するのですよ (^^)。

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2日間のイベントで,たくさんの来場者に楽しんでいただけました。
夏休みのちょっとした思い出として,ゼミ生が写真を撮ってプリントしてご家族に差し上げます。

そんな中,今はもう高校生になる障害児さんのお父様が,帰り際,「初めて娘と並んで写真が撮れました。いい思い出になりました!」と笑顔でおっしゃった。私も子をもつ親のひとり...じんと胸が熱くなりました。


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センターのみなさんに「すごい人気ですよ」と褒められたのもうれしかったのですが,2日間のイベントが終わって私たちが帰るとき,まだ後片付けが残っていて大忙しのみなさんが,全員いったん手を止めて,私たちのために集まってくださった。

お互いが感謝する関係。私たちには共通の目標がある。
子どもたちを喜ばせたい,幸せにしたい。その思いが家族や我々支援者自身の心も温かくする。
そして,そんなご家族や支援者の姿が,さらに子どもたちを成長させる力となるのです。

現場の皆さまと共感する。
人間って,どうすれば楽しんでくれるのか,喜んでくれるのか,幸せになってくれるのか。
それを実践する術を身につけてほしい。
そのためには,こんな経験こそが,学生たちを育ててくれると信じてる。

どんな教科書にも,決して書かれていない「人を幸せにするスキル」
授業だけでは教えられません。でも,参加した学生たちはそれを学んでくれたはず。朝から夕方まで立ちっぱなしでくたくたなのに,みんな充実した笑顔でした (^^)。

皆さまに,心から感謝。

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(吉田弘司)

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2018年8月25日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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