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2017年度 卒業論文発表会

実験心理学研究室のよしだです。

新設された国家資格「公認心理師」の話題でもちきりの心理学界隈ですが,心理学という学問は実践応用だけでなく,そのための基礎となる「研究」を大切にする伝統をもっています。

そして,学生たちが4年間の学びの集大成として,各自で行った研究を発表する場が卒業論文発表会なのです。

社会臨床心理学科の発表会はポスター発表形式。場所は学生会館1階のホール。
3年生と4年生が全員参加のイベントなのですが,2年生の姿も結構見られたのがうれしい。授業が終わって帰ろうかという1年生も通りがかりに見つけて見物してくれました。

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最近思うことは,結構,しっかりした研究が増えてきたなということ。発表を聞いていて,楽しめる!

学生はもちろんでしょうが,研究を指導する先生たちもさぞかし苦労したのでしょうねぇ~。


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私の研究室でも,ゼミ生たちと一緒に楽しく苦労してきましたよ。
特に今年は,「そんなことできるか~!」と,普通はあきらめるようなテーマにも全開で挑戦!
この挑戦の無謀さは,全国のどの大学の心理学研究室にも絶対負けてないと思う (^^;)...それが吉田ゼミ!


そのひとつは「VR」(バーチャルリアリティ,仮想現実)の活用。

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ゼミの研究のひとつ(岡﨑・古山研究)では,月が地平線近くでは大きく見えるという「月の錯視」の研究を行いました。
月の錯視(錯覚)は写真には写らないことが知られているのですが(地平の月も写真では小さく見える),VRがもたらす仮想の世界では...錯視が生じるのです!

研究のために作ったのが下(↓)のビデオの世界です。

仮想の世界なので月が2つあります。それを心理実験で大きさを変えながら,錯覚の程度を測るのです。
昨年のオープンキャンパスや大学祭でも展示していたので,ご覧になった人もいるかもしれません。
実験では飛ぶことはしませんが,VRの世界では,高さの距離も実際よりも高く知覚されるので,飛ぶと足がすくみます (^^)。


もうひとつの挑戦は,心理実験のツールとしての「擬人化エージェント」(アンドロイド)の開発。

コンピュータが人と接するインタフェースの部分に,人の形をしたものを使うことがあります。例えば,銀行のATMの画面などで銀行員さんのイラストがお辞儀していたりするのを見たことがある人は多いでしょう。
こんなキャラクタを工学分野では「擬人化エージェント」といいます。これがあると,コンピュータ臭さが減って,ユーザーが親しみをもちやすくなるのです。
究極のエージェントは「アンドロイド」かな。

私のゼミでは,視線や表情を使った感情コミュニケーションができるエージェントの開発にチャレンジしたのです。それは,そのエージェントを,人のコミュニケーション行動や感情理解を研究するために使おうという発想によるものです。

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ある研究(岸川・藤村・森重研究)では,ユーザーのコンピュータ画面操作に対して,エージェントが笑顔を振りまくと印象がすこぶるよくなることを見出しました。しかも,その効果は男性よりも女性で顕著でした。その一方で男性は,エージェントの笑顔に気がとられて,画面操作のスピードが遅くなっていました。
コンピュータなのに,笑顔で愛想を振りまくと,人はしっかりその影響を受けるようですね。

また,別の研究(齊藤・藤永研究)では,VR(仮想現実)の世界でエージェントに出会うと,人はそれに対してパーソナルスペースを維持しようとすることがわかりました。
パーソナルスペースとは,人間同士がそれを超えて距離が近くなると,不快に感じてしまう空間のことです。
モノに対してパーソナルスペースを感じることはないので,人はエージェントに対して,人間として接していたことを意味します。

そんな私たちが作ったエージェント,まだ開発途上なのですが,下(↓)のビデオでご覧いただければと思います。マウスの操作に対して,まるで生きているみたいに反応します。人によっては,ちょっと"コワイ"見え方をするかもしれませんが,これはロボット工学で「不気味の谷」といわれる現象です。この谷を越えるのが難しい。我々の脳は,これは人間ではない!...と敏感に察する能力をもつのです。


秋に学生たちとこのエージェントを使った研究を発表した学会で,他大学の研究者から「こりゃまたとんでもないものを作りましたねぇ~」と,褒められているのか,呆れられているのかわからないようなコメントをいただきましたが (^^;),研究をやっていると,そこには「遊び」と「勉強」の区別なんかありません。

遊びのようでいて,勉強が必要だし,勉強したことが活きて遊びのように斬新で魅力的なアイデアが生まれる。そしてそんなイキイキとした学びの過程を通して,純粋に「人間ってすごい! 人間っておもしろい!」と思える。これも「心理学」のおもしろさ。

今年もチャレンジは続きます。

(吉田弘司)

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2018年2月 1日 17:45に投稿されたエントリーのページです。

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